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2017年2月 1日 (水)

ウルウル・・・

 リ~ンリ~ン !!
  ハイハイ
、  出てみると
何処かで聞いたことがある様な、だけど俄に思いだせない声、
  ○ ○ です  
  エッ、Aさん?
  しばらくです、お葉書有難う、・・・それはそれは懐かしい声、
  いかがですか、お元気ですか・・・

  有難う、外出出来ないでブラブラしているんですよ
元気そうな声だけど 何処か寂しげ、
広いお屋敷なんだからお庭を歩くだけでも運動になる筈だから外へは出ないのかなぁ
まさか寝込んだいらっしゃる訳でもあるまい と不安が拡がる・・・

お互いに何から話して良いのか、何を話そうか、気が急いて・・・
電話の向こうでも おんなじらしい・・・
70年に及ぶつき合いなのに 何年もあっていないのに、思いだしてくれて嬉しい、
   病気なんてうそでしょ、
   いや、出かけるのが億劫になってねぇ 
   心臓の手術をっしたんですよょ・・それにもう91歳になっちゃったぁ・・・
   エッ うそ~、それで・・・
   お互いに歳を確かめあう歳になったわネ

笑い声が響いて すぐ横に彼がいるような錯覚、

ご兄さまはお二人とも亡くなられて彼が相続なさったと聞くが
町で一,二を争うお家であったのに何年も逢わないうちにはいろいろあったとか、
お住まいをビルに建て替えその一部にお暮らしとか、あの辺もかわったらしい、
ご兄弟そろって私どもをよくして下さった事が走馬灯のように思いだされる 
訳もなく涙が頬を濡らす、

すぐ近くを江戸川が流れていて千葉と東京との境目
都会と田舎の混じり合った様な土地であった、暮らす人たちも素朴な人達で 
下町から移った私どもをよくして下さった 殊更彼のお兄様にはよくして頂いて 
私の青春を語る時には欠かせない一ページでもある、

其の頃、泉鏡花をむさぼるように読んでいた私はそんなことを話しあったのであろうか
  この間深夜便で”女系図”を聞いてねぇあの頃思いだしましたよ~
  あら、そうだったの、

彼も読んでいたのであろうか しばし、時を忘れる、    
  数年前あった時 川甚のウナギを 食べに行きましょうね、  
そんな約束したのに外出出来ないなんて・・・

どれほどの時間が流れただろうか 
数え切れないほどの想い出の数々、楽しかったことも、悲しかった事も今になってみれば
ただ、懐かしさだけが残る不思議さ、

父の急死で私の運命は大きく変わった
そして彼達にも逢わなくなった、いいや 逢えなくなった、
交々の思いに胸が詰まる 過ぎた時をおもって受話器を握りしめる私、
目の前にいるかの様なのに・・・手の届かない歯がゆさ・・・そんな時間が流れた
ぷつんと切れた電話の向こうに彼の笑顔が・・・
  また声を聞かせてください  彼のそんな声がいつまでも耳に残って、
生きているうちに逢いに行きたい、川甚へいかなくっちゃ~

思いがけない電話に 訳もなく流れる涙、笑い声も、一言一言も 
食い入る様に胸に入りこんで嬉しい様な 悲しい様な、懐かしい様な
勿体ないほど嬉しい時間であった
両親と、息子とさえ過ごした時間よりも永い付き合いであることを思えば
”友人以上 恋人未満”彼たちご兄弟は私にとってそんな人たちと言えるかもしれない、
思いがけない嬉しいひと時であった 

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コメント

そんな懐かしい方からのお電話だったんですね。

一瞬にしてその時代が蘇る様子が浮かびます。

投稿: まゆクー | 2017年2月 5日 (日) 01時12分

まゆさま
昔 家族ぐるみでお世話になったんです
夢のようでした

投稿: さえ | 2017年2月 5日 (日) 11時06分

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